MODERN CHINESE QUADRANGLE HOUSE japanese

MODERN CHINESE QUADRANGLE HOUSE

機能 :  個人住宅
構造 :  RC造、一部SRC造
設計期間 :  2011-2014
施工期間 :  2012-2015
建築設計 :  勝田規央,  江藤廉
内装設計 :  勝田規央,  江藤廉
構造設計 :  鄧暁,  唐宏
設備設計 :  石川星明, 山崎隆司 (北京東洲設備設計)
撮影 :  広松美佐江(鋭景撮影)

 

<現代北京における四合院建築「現代院」>

本プロジェクトは北京の中心部に位置する歴史的街並が残された居住地域に計画された個人住宅建築である。敷地を実際に訪れたときにその周辺環境及び敷地がもつ潜在的な力と可能性を強く感じ、そのような場所に建てる住宅として「過去に例の無い特異な経済発展を遂げた北京の現在の様相」と「長い歴史を持つ大都市北京」という二つの文脈を反映させた「現代の四合院建築」、それこそが本プロジェクトの設計コンセプトに適合すると考え、この住宅のタイトルを「現代院」とした。

 

中国の代表的伝統住宅建築の一つ「四合院」、この四合院が美しい状態で現存している場所は非常に少なく、そのほとんどが文革以降に無法地帯のように中庭や建物上部にバラック(雑院)が増築され、地域の歴史的景観が失われている。現在の胡同の美しい伝統的街並も住民たちによって丁寧に築き上げられてきた歴史そのものではなく、近年、北京市によって短期間で行われた補修と整備による表層的な「昔ながらの北京の情景」である。一歩その敷地内に入れば、住人それぞれが自由に改築や増築を繰り返して作り上げられた雑院もしくは富豪によって築かれた豪邸が現れる。この実情は少なからず短期間で急激に発展した経済の影響を受け、その過程で生じた様々な摩擦に対し出来る限り適応させていった結果でもあり、現代院の空間構成上非常に重要な要素となっている。

 

<四合院から抽出した2つの要素「塀」と「中庭」>

現代院では伝統的な四合院建築における2つの構成要素を踏襲している。

一つ目は敷地外周に建てられた大きな「塀」である。

もともと用地の境界を示すだけでなく外敵の侵入や強風等から守る役割をもち、部分的に建築物の外壁も担っている。ここに「様式の境界」という新たな要素を加え、敷地外側と内側で全く異なる世界を創り出している。塀の外側はグレーレンガタイルで仕上げて北京の景観と完全に調和させ、塀の内側は一転してイタリア産のトラバーチン(敷地内の建物外壁部分)と白塗料(塀内側の面)で仕上げた現代的空間を造り出している。これによって伝統的な北京胡同世界が広がる外部から敷地正門をくぐると一気にシンプルモダンな建築と中庭の世界が広がるシークエンスとなっている。

 

二つ目は「中庭」である。

四合院の基本的な空間構成は正方形および長方形の中庭を中心とし、その四方を建物が囲う形式である。塀によって堅固なまでに敷地外部と内部が遮断された空間構成は居住空間への採光や通気といった良質な居住環境維持に必要な要素をすべて中庭から確保してきた。また日常生活の様々な活動においても中庭はその中心となり活用されてきた。四合院建築にとって­「中庭」とは空間の核としての役割を担っている。現代院でもこの中庭と居住空間の関係性は空間構成におけるメインコンセプトとなっている。ただ、歴史ある四合院建築は平面構成のみで完結できているが、時代が変わった現代の状況にはそのまま当てはめることは不可能といえる。それはライフスタイルが多様化し必要とされる(つくりたいと望まれる)機能が増えたことで、平面構成だけでは膨大な面積を敷地内で美しく解ききれないからである。そこで現代院では空間を積み重ね、その断面構成においても居住空間に中庭との関係性をもたせている。敷地の中には5つの中庭があり、そのうち1つは地下1階レベル、3つは半地下レベル、1つは地上レベルに配置され、更に2つの屋上庭園が2階レベルに配置されている。ここから各居室へ平面的もしくは断面的に繋がることで空間に憩いを与えている。

 

 

<スキップフロアによる高さの調整、地下空間、中庭>

施主から以下の3点は出来る限り実現するよう求められた。

 

1)敷地面積に対し、オーバースペックな機能と居室面積

2)周囲と合わせて目立たないように建築物の高さをできるだけ抑える

3)建て替える前に住んでいた住宅の中庭の広さを確保する

 

単純に空間を積み上げると簡単に高さ制限を超えてしまい、平面的に拡げると中庭を確保出来なくなるため、地下へ拡げて同時に地下の中庭を分散配置させ、出来るだけ自然光と自然換気が可能となるよう空間を配置し、且つスキップフロアによる構成を採用することで生まれた「高さのズレ」というスペースを活かすことで、広いリビングや高さのある書斎、快適な寝室を実現し、建物全体のバランスを整えている。

 

 

現代院というプロジェクトを通して北京という都市を見つめ直すきっかけになり、更には中国と日本の習慣や文化の違いなどを再発見することへ繋がった。竣工して数ヶ月が経過し、クライアントからお言葉をいただいた。

「この建物に住み始めてから数ヶ月が過ぎ、生活の中で良い部分も悪い部分も含め、新しい発見が沢山あった。1日という時間の経過と共に空間の質が変わるのも住んでみて初めて気づいて、一年という期間でどうなるかが今すごく楽しみだ。こういう生活も悪くない。」 

この言葉は私にとって最大の賛辞であり、本来住宅は人々にとってこういう存在であるべきだと思う。